渥美伊都子
渥美伊都子氏は1994年から現在に至るまで、CISV日本協会の会長として20年間、たくさんの子供たちの海外派遣プログラムや日本におけるCISV活動に携わっていらっしゃいます。
今回はそんな渥美氏にCISVについてお伺いしました。
CISVに関わりはじめたきっかけをお教えください。
「長男(渥美直紀氏)を11歳の時にビレッジに参加させたのがCISVとの関わりの始まりでした。当時は学校の先生からの推薦だったんですよ。1961年のことでした。(派遣プログラムは1958年にスタート)当時の日本は今とまったく状況が違っていて、海外へ行くということに、誰もが尻込みしてしまう時代でした。」
「イギリスのアニックカッスルが派遣先でした。当時はまだCISVが無名の頃でしたから、私自身も子供を行かせるにあたってずいぶんと下調べしました。
そもそもCISVが日本に根付くきっかけになったのは、第一代会長の桑野辰平氏(故人)のご尽力です。桑野氏は、CISV創設者のドリス・アレン女史から送られてきた手紙によってCISVの主旨にいたく感動し、日本に平和の根を育てる決意をし、大変な努力でCISVの種を日本に撒かれました。
11歳の子供を行かせるにあたっては、親が相当バックアップをしなくてはいけません。渡航準備から帰宅後のフォローまで、大変でした。当時はまだ自由に外国に行くことが困難な時代でしたから、なおさらです。
渡航の際は全員お揃いのブレザーを着用しました。今は日本の民族衣装はゆかたと甚平を持参していますが、当初は着物を持参しました。ですから日本であらかじめ着付けの勉強をしてから渡航したのです。簡単な日本舞踊も習い、現地で披露したりもしました。」
今までの長いCISVの活動の中で、一番思い出に残っていることは?
「派遣プログラムスタート当初からしばらくの間は、親同士は強い結束で何かあればすぐに集まる、という体制でしたが、組織化されてはいませんでした。けれども、これからCISVを日本にしっかり根付かせるためには、そしてさらなる会員の協力を求めるためには財政面での安定化が必須でした。そのため、なんとしても法人化して、ご寄附に対する税控除を受けられるようにしないといけない、という強い意志の元、前会長(第三代会長 故渥美健夫氏)が奔走し、ついに1987年に社団法人となったのです。
法人化する前までとても大変だったのは、運営のための寄付金集めでした。今でも苦労していますけれど。(笑)
たとえば当初はお母様同士でバザーを開いて資金集めをしてみたり。はじめの頃は関わっているメンバーは少数でしたから家族のようなおつきあいでした。お父様方も皆非常に熱心でした。キャンプ地を皆で探しに行ったり、リーダーになってくれそうな方を一生懸命探したり。何か問題があれば、当時の会長だった中曽根康弘氏(元首相、第二代会長)のところに出かけていって相談したり。」
来日されたドリス・アレン氏とお会いになっていらっしゃいますね。
「CISV創設者のドリス・アレン女史は生涯に渡って4度日本にいらっしゃいました。アレン女史が最初に日本にいらっしゃった時、岩崎統子理事にちいさな薔薇のつぼみの花のブローチをお渡ししたそうです。この花はまだつぼみだけれど、必ず大輪の花が咲きますよ。とおっしゃられて。岩崎さんはとても感激して大事にしていらっしゃいます。」
「戦争の悲惨さに心を痛めていたアレン氏は、子供のなかにこそ、人種や文化に対して偏見のない心を育てなくてはいけない、という理念でCISVをスタートしました。
組織が大きくなっても、創設から何十年たってもこの理念がゆがむことはありません。」
子供達がCISVを通じて得られるものは何だとお考えですか?
「最初に行く11歳の4週間のキャンプの経験というのは、とても大きなものだと思います。11歳で異文化を吸収するのは、日本に閉じこもっているよりずっとずっと視野が広がると思います。今でこそ、海外にはすぐに行けますが、言葉もよくわからない状態で4人の11歳が同じ年齢の海外の子供達と交わるでしょう?そんな経験はCISVだからこそできる貴重な経験です。」
「どのプログラムでも渡航前の子供達は、とても不安な表情をしています。けれども報告会では、目をキラキラ輝かせて、『すばらしかった、また行きたい、英語をもっと勉強してまた別のプログラムに参加したい、友達が一杯できました!』 と話をしてくれます。それを聞くのが私は何よりも嬉しいのです。」
CISVの会員の皆様やこれからCISVに関わる方へお言葉をお願いします。
「『継続は宝なり』という諺がありますように、設立50余年の歴史あるCISV日本協会から派遣プログラムに参加した若者達は延べ5,000人にも上っています。彼ら(CISVer)は世界中で活躍しています。
『平和教育は子供から』というドリス・アレン博士の素晴らしい理念が次の世代まで末永く続くように努力しておりますので、どうぞ今後ともご支援、ご協力を頂きたく、よろしくお願い申しあげます。」
インタビュアー:鈴木勇貴(広報・プロモーション部会長)
文・写真 杉田佳子(関東支部広報委員長)