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STEP報告

(2018年11月23日~24日、宮城県)

2019年1月12日

 11月23~24日の1泊2日でMOSAICプログラムの1つであるSTEP(Smile Tohoku Empowerment Project)に参加してきた。参加者は19人で、今回はJB、名古屋や関西からの参加者もいた。

1日目は仙台在住のCISVer武藤都さんによるガイドで名取市閖上地区にて朝市などをめぐり、その後津波によって校舎は全壊し、生徒の8割が亡くなった大川小学校にて、被災者でありその体験を未来に繋ぐ語り部である只野哲也さんにガイドしてもらった。そして南三陸町にて畠山水産の皆さんが捕った新鮮なタコなどの海鮮料理をたっぷり堪能してから、故郷のために、そして被災地の人たちの笑顔のために奮闘するゲストスピーカー藤田岳さん、そして佐藤慶治さんの活動や想いを語ってもらった後、女川町にある廃校をリフォームした懐かしい佇まいの宿泊施設に泊まった。

2日目はしめ縄作り体験にて、ベテランの先生方が参加者たちをヒイヒイ言わせつつ指導してくれた。その後石巻在住のCISVerである浅野さん宅で捕れたてほやほやの海鮮弁当とあたたかい豚汁を食べながらユニークな石巻の歴史を学び、それをふまえつつ石巻2.0のスタッフにこれまたユニークな石巻の未来を語ってもらった。

 私は今回のSTEPは2回目の参加となる。実は私自身も宮城県石巻市出身で中学1年生の時に被災したが大学進学をきっかけに上京し、すっかり東京に魂を売ってしまったと言っても過言ではない程の女子大生っぷりであったため、常に外から来る人たちを迎える側であった高校までの自分とは対照的に今度はお迎えされてみる、第三者から見た「被災地」というものを体感してみたいという実験的要素を持ち参加したのが1回目であった。

 しかし最終的に至った結論は「被災者はどこに行っても被災者」「そらし続けていた震災」そして「生きていることそのものに感謝」である。「被災者はどこに行っても被災者」というのは、津波によって荒野と化した場所を目にしても容易に元の住宅街が想像できてしまったり、その逆も然りで震災後新しく建った住宅街を見ていると扉が無く薄暗い家の中に取り残された、汚れた生活の跡やヘドロが頭をよぎり、また真っ黒な水が生き物のように町を呑み込んでいく姿が脳裏に焼き付いて忘れられていない事に気が付いてしまったため、当初の目的を果たすことは不可能であった。

 「そらし続けていた震災」とは文字通り、震災を事実として受け入れる一方でそれに付随するマイナスなイメージにかなり影響されていたそれまでの私はいつしか震災から目をそらし、話をそらし、耳をそらしていたことに気が付いた。STEPと出会ったからこそもう一度向き合う必要性のあ

る故郷のことだけなく友達や家族のこと、そして自分自身のことを認識できたことは大きな収穫であった。

 3つ目の「生きていることそのものに感謝」というのはやはり震災と聞いてまず生と死に関してのイメージは確実に避けられないし、私自身、そのような生の奇跡の中で毎日を暮らしている。私だけではなく、いつどこで世の中の「あたりまえ」が突然消えるかも分からないあやふやな奇跡の中で人々は暮らしているのである。それなのに上京してから特に思ってしまうのは毎日をなんとなく、吉田兼好もびっくりするんじゃないかと思うほどつれづれなるままに過ごしているのである。つれづれなるままに暮らしている方がまだ良いという生き方をしてしまう人もいるし、私自身してしまっている時もある程の世の中だということも無視できない。常にとは言わないし難しいことかもしれないが、生そのものに感謝することではじめて充実を手に入れることができるのではないだろうか。

 この3つの結論をふまえ、今回参加したSTEPで学んだことは正直に言えば昨年度とほぼ変わらないが、もう1つ付け足すとすれば「想像以上にみんな元気」ということである。武藤さんが話してくれた子育てであったり、防災をひたすらに意識し進んでいく地域づくりであったり、みんなが言う「復興」にも人それぞれの形があることや、只野さんが私たちに伝えてくれた一見後ろ向きにも見えるがもの凄く前向きなアプローチ方法である「語り継ぐ」ということの大切さ、藤田さんや佐藤さん、石巻2.0の笑顔溢れクリエイティブでアツい、「被災地」というレッテルに縛られない活動の数々、そしてしめ縄づくりの先生方や浅野さん、畠山水産の皆さんの朗らかさと美味しい海の幸によって文字通り幸せいっぱい元気いっぱいになってしまうのである。

 今回遠方からの参加者の感想にあった「現地に行かないと分からないことがある」とはまさにその通りだと思うし、実際に行動に移すのは簡単なようで難しい。しかし学びを得ること以上に人生を豊かにしてくれることはないとも私は思う。たくさんの学びをくれたこのSTEPツアーに関わってくれた皆さんや、参加者のみんなにとても感謝している。

青木采里奈(関東支部)